東京地方裁判所 昭和32年(ワ)6491号 判決
第一
当事者
原告
国
右代表者法務大臣
愛知揆一
東京都千代田区霞ケ関一ノ一
東京法務局訟務部
右指定代理人検事
加藤隆司
同
法務事務官 大沢孝司
同
都同区大手町一丁目七番地 東京国税局徴収部
同
大蔵事務官 恩蔵章
神奈川県横浜市南区永楽町一ノ五
被告
青原茂春
右訴訟代理人弁護士
阿南主税
第二 主文
被告は訴外青原工業株式会社に対し別紙目録記載の建物につき所有権移転登記手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
第三 事実
一、請求の趣旨
主文第一、二項同旨の判決を求める。
二、請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
旨の判決を求める。
三、請求の原因
別紙当該記載のとおり
四、請求の原因に対する答弁
1、請求原因一、記載の事実中被告が訴外青原工業株式会社の代表取締役であることは認めるがその他は否認する。
同二、記載の事実中法人税並に源泉所得税について滞納している事実は認めるがその他は否認する。
2、本件建物は昭和二十九年十月二十日、被告が訴外小泉重雄から買受け、同年十一月頃改築したもので訴外会社の所有ではない。
五、証拠方法
1、原告
甲第一乃至第六号証第七号証の一、二、第八号証を提出
証人渡辺政夫の証言援用。
乙第一、三号証第五号証の一、二の成立を認め、第二、四号証の成立は不知。
2、被告
乙第一乃至四号証、第五号証の一、二提出
証人高橋諦の証言。被告本人尋問の結果援用。
甲各号証の成立はいずれも認める。
第四 理由
被告が訴外青原工業株式会社の代表取締役であることは当事者間に争なく、又、成立について争いのない甲第八号証、乙第一号証及び証人渡辺政夫の証言によれば、訴外小泉重雄との間の本件建物の売買契約書に初め訴外青原工業株式会社が買受人と記載されたのが訂正されていること、売買契約と同時に支払われた手附金の受領書の宛名が右訴外会社となつていること、本件建物と共に小泉から譲受けた敷地の借地権につき地主芝浦土地株式会社は訴外青原工業株式会社に対し右譲渡の承諾を与えていることが認められ、更に成立について争のない乙第一、三、四号証、第五号証の一、二、甲第二乃至第五号証及び被告本人尋問の結果によれば、本件建物は訴外青原工業株式会社の本社の建物として購入されたものであること、これを訴外小泉から譲受け改築したのが昭和二九年一〇月から翌三〇年一月までのことであり、訴外会社の帳簿に、本社土地建物に対する仮払金の項目の記載されたのが昭和二九年四月一日であり、又本件建物が訴外会社の所有として記載されたのが同三〇年八月三一日であることが認められるし、(被告本人の供述によれば訴外会社の帳簿に本社建物の仮払金の記載がなされ、更に訴外会社所有物として記載されるに至つたのは訴外会社の社員がその不正消費の辻つまを合わせる為に真実に反してなしたものであるというが、右被告の供述のみでは右主張のような事実を認めるに足りない)なお、成立について争のない甲第一号証第七号証の一、二によれば本件建物は訴外会社の債務を担保するために訴外株式会社三菱銀行の為に根抵当権及び抵当権が設定されており、訴外青原工業株式会社の和議に際しても本件建物が右訴外会社の資産であるという基礎の上に和議手続が進められている事実が認められ、これらの事実を綜合すると本件建物は訴外青原工業株式会社がその本社の社屋として購入したものであつて、ただ登記簿上訴外会社の代表取締役である被告の名義で登記されているものというべきである。従つて、被告は真実の所有権者である訴外会社に対し本件建物の所有権登記名義を移す義務があるといわなければならない。
ところで成立について争のない甲第七号証の一によれば訴外会社の資産は本件建物を除くと金二、二〇三、九〇〇円に相当する動産を有するのみであり、被告が金三、九三三、四一九円の法人税及び源泉所得税を滞納していることは当事者間に争がないから、右税金の徴収者である原告がその権利を保全するため訴外会社に代位して被告に対し本件建物の登記名義を訴外会社に移転することを求める請求は理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 三淵嘉子)
目録
東京都港区芝浦弐丁目参番地の参
家屋番号 同町九十八番
一、木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建事務所 壱棟
建坪 四拾五坪
附属
一、木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建倉庫 壱棟
建坪 五拾六坪弐合五勺
一、木造亜鉛メッキ鋼板葺弐階建居宅兼倉庫 壱棟
建坪 弐拾弐坪五合 弐階 九坪
別紙
請求の原因
一、別紙目録記載の建物は訴外青原工業株式会社の所有であるにかかわらず、被告青原茂春は訴外会社の代表取締役たる地位を利用して、別紙目録記載の建物の所有権者を被告の名義として登記したものである。因て該登記は実体法上の権利に合致しない無効のものであるから右被告は真実の権利者たる訴外会社に対し之が所有権移転登記をなすべき義務があるにかかわらずその登記手続をなさないものである。
二、然るに訴外会社は昭和二十八年度から昭和三十一年度までに法人税並に源泉所得税について合計金三、九三三、四一九円の国税を滞納しているので、原告国は訴外会社に対し速やにその徴収を計らねばならないのであるが、訴外会社は現有資産と目すべきものは右建物のみであり従つて右滞納税金を徴収するためには右の公売建物代金をもつてこれに充てる以外に途がないのであるが同手続をとる前提として真正の所有者たる訴外会社のため所有権取得登記がなされることを必要とするので原告国は、訴外会社に代位して請求の趣旨記載の如き判決を得たく本訴に及ぶ次第である。